映画紹介

 これまで、多くの原発の感動的なドキュメンタリー・ドラマ映画が製作されてきましたが、この映画は少し違う切り口となっています。

 多くの原発訴訟に携わってきた河合弘之弁護士(脱原発弁護団全国連絡会代表)が監督、海渡雄一弁護士が構成・監修を務めており、原発にかかわるほとんどの論点を網羅して、被災者をはじめ、原発研究者・技術者、医者(チェルノブイリ)、経済学者、エネルギー研究者、弁護士などの声を集めていることがこの映画のすばらしい点です。

 初めての人にでも、わかりやすく原発の歴史と問題点を明らかにしており、私たちが行った「日本と原発」さいたま上映会においても、身近ないろんな場所で上映したい、という声が多く寄せられていました。

 ぜひ、いろんな場所で、小さな上映会を開いていただきたいと思います。(ひ)


大飯原発の運転差し止めを命じる福井地裁判決を喜ぶ河合弘之弁護士と海渡雄一弁護士
(『日本と原発』の公式ホームページより)


高野仁久 浪江町消防団員 

 うめき声や物を叩く音がしたので朝から救出の準備をしたが、原発が危ないという情報が伝わってきたので救出作業は不可能になった。助かった人は間違いなく何人かいたはずなんですね。


川口登 浪江町・請戸 農業 避難生活を送る

 両親の遺体は損傷が著しくてすでに焼却されていました。なぜ1か月以上も放置しておいたんだと。線量が低いのはマスコミのカメラマンが入って初めて分かったんですね。


馬場有 浪江町町長

 捜索活動をするとなればできたんです。それが撤退ですから。10km圏外に出て下さいという政府の指示ですから。あの時のことを思い出すと涙でますよ。放射能が低いということがわかって捜索できたのが4月の14日ですよ。


小出裕章 京大原子炉実験所 助教

 一番危険な核分裂生成物のセシウム137を尺度にとれば、広島原爆の168発分をすでに大気中にまき散らしたと日本政府が言っています。今現在、子供も赤ん坊も含めて汚染地帯に取り残されて日々、苦闘しているという現実です。


アナトーリー・チュマク ウクライナ放射線医学研究所 副所長

 事故当時に子どもだった人の6,000人以上が潜伏期間を経て甲状腺ガンの手術を受けたのです。当センターの研究の結果、事故後の甲状腺ガンの増加は、子どもだけの事ではないことが分かりました。事故処理の作業員の発病リスクは5倍以上になったのです。


エフゲーニャ・ステパノワ ウクライナ放射線医学研究所 小児科医

 福島で被爆した人達にはチェルノブイリの子どもたちと同様の問題が起こる可能性があります。発病を防ぐためには子ども達への定期検診が重要です。


コンスタンティン・ロガノフスキー ウクライナ放射線医学研究所 神経科医

 日本は旧ソ連と同じ「情報の隠匿」という道を歩んでいると私は言い続けています。福島の原発事故についての情報の不透明性や矛盾が、国民の政府への不信、科学者への不信、社会への不信を招いています。


田中三彦 元原子炉設計技師(バブコック日立株式会社)、元国会事故調査委員

 津波でなく地震でやられたと最初から疑っていました。これは、日本中の原発に波及しますよね。(解説:田中論文は津波到達の2分以上前に電源喪失が起こり、配管が壊れて水素爆発が起こったことを論証)


古賀茂明 元経済産業省(電力改革の必要性を訴え2011年9月辞職)、古賀茂明政策ラボ代表

 発電所を作るんだった高い方がいいわけです。地域経済界はみんな電力会社に足を向けて寝られない。経産省やエネ庁の職員は若いころから接待づけで、電力会社の職員と一緒に遊んだお友達になっている。そして、電力会社やメーカーとかに天下りし、経産省が本気で電力会社を責めるようなことはありえない。


河合弘之 弁護士

 裁判の力をもう一回、見直すべきだ。裁判というのは、多数決だろうが、世論が反対しようが、正義は正義だ。これが正しいんだと、孤立無援で個人が戦える唯一の手段で、民主主義社会、自由主義社会で重要なインフラなんだ。

民主主義って時々、暴走するじゃないか。最大の民主主義国家であるアメリカが一番戦争するわけだからさ。そういう時、一人でも我行かんで政府を正す方法が裁判なんだ。


海渡雄一 弁護士

 とにかく勝ち続けることが重要ですよ。勝ち続けることによって、裁判所にはこういう事件についてはもう負かすことはできないんだという、そういう戦いをしましょうよ。



青木秀樹 弁護士

原子力規制委員会の新規制基準の第1の欠点は、万が一事故が起こっても住民に著しい放射線障害を与えない場所に立地しなさいという最後の安全基準に目をつぶった基準になっている。第2の欠点は、自然災害ではいっぺんに全部やられることがあるのに、設計基準では1つだけが壊れることを前提にして事故評価をすればいいと、そのままになっている、3番目は、鉄塔が倒れるなど外からの電源系が重要であることがわかったにも関わらず、外部電源の確保には手をつけていない。


渡辺幹夫 川俣町 避難生活を送る

 朝早く庭で大きな火が見えました。ガソリンをかぶって焼身自殺したのです。避難を余儀なくされ、仕事を失い、友達と離ればなれになり、妻はひどい鬱状態でした。家を失い小さなアパートに移り、泣くばかりでした。

すべてを失ったわけですから、この悔しさはどこにぶつけたらいいのか。


五十崎栄子 浪江町 避難生活を送る 

夫は避難して体調を崩して鬱状態でした。ある日、危険区域に入り、橋から飛び降りたのです。原発のことと将来の生活の不安があって、避難解除準備区域になってても、現実は何にも手ずかずのまま。海の方に行くと原発の煙突が丸見えなんですね。

私たち福島の方の事を考えたら、他の地域で再稼働は絶対やったらいけないものだと思います。


鈴木大介 鈴木酒造店 長井蔵(浪江町請戸→山形県長井市)

原発の事故さえなかったなら、地区の中で再建が図れたと思うんですね。みんなばらばらになってしまって、過去も分断されて、未来も掴めない状況にあるのが自分たちかなと。

たまたま家の酒に思いを寄せてくださった方たちから作ってくれと言われて、できなくてもやらざるをえないかなと。その後、世話になったご家族が行方不明になられて、ご遺体を火葬場に送りに行ったんですけど、腐敗臭をかいだ時にどうしてもやらなければならないと強く思いました。人間の尊厳ってどこにあるのか、これが日本という国でおきていることなのか、強く怒りを覚えたというか・・・


大島堅一 環境経済学者

原発は電力会社にとっては安い。安全対策をあまりしなければ安くなりますし、事故を計算に入れていませんから。要は、一番高いところを除外しているわけですから。

ところが、バックエンドコスト(使用済み燃料の処分・廃炉)や政策コスト(技術開発費、立地対策費)、事故コスト(被害、損害賠償、廃炉とか事故収束、追加的安全対策費)を加えると、原子力は9円/kwh以上になり、実際には最低でも12.6円/kwh以上になります。どこまで上がっていくかわからない青天井ですね。


飯田哲也 環境エネルギー政策研究所 所長

これまでの10年間は、第4のエネルギー革命で、自然エネルギーは倍々ゲームで増え、2012年には、風力と太陽光を足すと原子力を追い越した。

自然エネルギーの設備投資は、この10年間で5兆円が25兆円へと5倍になり、あと10年で、50兆円から100兆円を超えるかもしれないと言われています。第3の産業革命です。

飯田市では2004年から市民の金を集めて「おひさまファンド」が太陽光発電などを始めていて、これが日本中に広がり、喜多方市では「会津電力株式会社」が太陽光発電を進め、東電の500kwの水力発電所を買収できれば、直ちに福島県は自然エネルギー100%になると言ってやっています。


細川護煕 自然エネルギー推進会議

私ども、原発0という状況の中で、自然エネルギーによって日本の活路というものを開いていくまたとないチャンスだということをよく認識しながら、この自然エネルギー推進会議の活動を進めてまいりたいと思います。


小泉純一郎 自然エネルギー推進会議 

原発のない国づくりのために頑張っていく、これこそまさに大きな志だと思って。無限にある自然エネルギーを我々の発展に生かす国づくりに向かって最後まで頑張っていきます。


長谷川健一 飯舘村 酪農家 避難生活を送る

3月21日には国の方から飯舘村の水道水から約1000ベクレル近い放射性ヨウ素が検出されましたと連絡があり、飯舘村の人達はそれまでずっとその汚染された水を飲んで、その水でご飯炊いて食べて、風呂に入っていたんだよ。


早川篤雄 楢葉町 宝鏡寺 住職 避難生活を送る

この30km県内に復興ってことはありえないんですよ。この放射線の地域は、有史以来の地域が消滅したんだと。完全に消滅した。



田中三彦 

技術というのはね、人類の種の絶滅を予感させるようなものはスケールが大きすぎて、これはもう人間が扱っちゃいけないと僕は思う。そういうものを、繰り返し失敗を重ねながやるというのは、じゃあ、福島の失敗をもう1回やるんですか、その覚悟はあるんですか、その意味はあるんですか。


小出裕章 

福島を中心とした汚染地帯で、人々が被ばくしながら生きていく。コミュニティとしてどこかに避難させるというような手立てを取るべきだと思います。


大島堅一

すみやかに廃止することがもっとも経済的だと思います。安全対策などしないで、とっとと廃炉にする方がいいと思います。


古賀茂明 

自然の中で生きるという日本人の生き方が技術的に可能になった。その段階に入ったにも関わらず、日本人だけが気づいてなくて、原発を世界に売り歩きます、みたいな。安部さんの頭の後ろにはドクロマークが付いている、死の商人だと。


飯田哲也

 自分たちのエネルギーを作るということに気づいた若者は自分たちの仕事を作り、地域を作るということをすごく自信を持って日本中で生き生きと一緒にエネルギーづくりに参加しているんですよね。


五十崎栄子 

同じ屋根の下で暮らせたものが、バラバラになって、子どもにも、孫にも会えない、そんな状況の生活をしているのに許せますか?ちりぢりになって。


馬場有 

子どもが作文を書いてくれたんですね。「私たちが大人になったら町を再生する」とか「きれいな町に大人たちが戻して下さい」とかね。大人の責任として、とにかく町を再生すると。


河合弘之

想像してみて下さい。あなたの住む町が放射能に侵されることを。目に見えない、臭いも形もないものがあなたの未来を、過去さえも奪うことを。

あなたがあなたの家に帰れなくなる。街から生活の音が聞こえなくなる。毎日挨拶していた人達と会えなくなる。

日本人はチェルノブイリを見ても、自分たちにも起こることとは想像できませんでした。そして福島を見ても忘れてしまいそうになっています。

この映画で感じたことをそばにいる人達と分かち合って下さい。

この映画のことを、新たな原発事故の避難所で思い出すことのないように、あなたができることを考えてみて下さい。


 【写真:Kプロジェクト提供】


<その他の主な内容>

・原爆から原発へ

・原子力ムラの構造

・自動車・航空機事故と原発事故 (個の死と種の死)

・できてない津波対策(浜岡原発)

・海へ流し続ける放射能汚染水

・処理できない核燃料廃棄物

・国富流出論批判

・福井地裁判決(基準地震動、最大の環境汚染)、など